公認会計士による期末監査の実態、日本公認会計士協会が公表

日本公認会計士協会より「期末監査期間等に関する実態調査報告書」が2018年3月15日に公表されました。

日本公認会計士協会 「期末監査期間等に関する実態調査報告書」の公表について

 

企業活動が高度化・複雑化する中、公認会計士による会計監査の品質を維持向上のために、協会として採るべき施策を検討するための資料を得ることを目的として、調査が実施されています。

 

今回の調査で判明した課題には、制度そのものが持つ矛盾が原因になっているものもあるように思います。

一方で、企業による不適切な会計処理が頻発する中、社会からは「質の高い監査」が求められています。

公認会計士は、今回判明した課題から目をそらすことなく、適切な議論を行い、改善に取り組んでいく必要があると思います。

期末監査の手続実施期間は平均14日

今回の調査で、期末監査は平均14日間で実施されていることが分かったとされています。

3月決算の会社で、4月中旬ごろまでに会社が決算をまとめ、その後、監査に入って、4月中に主だった手続を完了させるようなスケジュールが平均ということですね。

 

本来、会社法監査も同時に実施している上場会社を前提に考えたとしても、もう少し余裕をもったスケジュールで期末監査を実施できるはずです。

しかしながら会社が決算短信を発表した後に、決算数値の変更を依頼するようなことがあると、トラブル必至なので、会社が決算発表を行うまでに、主だった監査手続を終わらせている実態が、明らかになったということなのでしょう。

 

まあ会社の担当者からすれば、間違いがあるなら決算発表前にいってほしい、もっといえば、社長へ決算報告を行う前にいってほしいというのが本音で、監査人がトラブルを避けるためにこのようなタイトなスケジュールで監査を実施しているというのが実態なのでしょう。

 

一つ目に、期末日後の監査日程が具体的に明らかになった。期末日後の監査手続の集中実施期間は、全体としては平均 14 日間程度であり、被監査会社の規模や決算短信発表の時期によって違いがあることが判明した。また、これに関連し、法定監査の対象でない決算短信に対する監査人のチェックが幅広く行われている実態があり、その背景には、被監査会社が決算短信公表後に決算数値の修正に応じなくなる傾向があることが示唆された。

出典:「期末監査期間等に関する実態調査報告書」

多くの監査業務で監査時間は不足しているとの認識

会社の決算発表までに主だった手続を終わらせるよう監査を実施している監査人ですが、なんと94%もの人が、「期間延長が望ましい」と回答しています。

また単体監査で 70%、連結監査で 65%の監査業務で監査時間が不足していると認識されています。

これらの傾向は、監査報酬が安かったり、監査メンバーが不足する場合により強く表れているようです。

 

個人的に気になったのが、「「監査意見の表明に必要な最低限」を妨げるほどの悪影響があることは観測されなかった」というくだりです。

もし監査手続の調書化とその適時の査閲を行うことができていないならば、それ自体が「監査意見の表明に必要な最低限」をクリアしているとは言えないのだと思います。

まあ、このような調査に対する回答として、「「監査意見の表明に必要な最低限」を妨げるほどの悪影響があった」とは口が裂けても回答できないのでしょうが。

 

いずれにしても、ここまではお客さんであるクライアントの都合に合わせて監査を実施してきたわけですが、「質の高い監査」が社会から求めらている中、同じことを続けるのか、しっかりした議論が必要と思います。

二つ目に、期末日後の監査日程の監査の品質への影響について、「監査意見の表明に必要な最低限」を妨げるほどの悪影響があることは観測されなかったものの、監査手続の調書化とその適時の査閲を行うには、監査時間が不足するという回答傾向が見られた。こうした監査環境が長期的に継続するならば、将来の監査の品質に関連する監査チームメンバーの能力向上が妨げられる懸念がある。期末日後の監査日程の期間については、94%以上の回答者が期間の延長が望ましいと回答した。また、延長への要望は、期末日後の監査日程の日数だけでなく、監査報酬や監査チームに投入される人員資源の状況に対する回答とも関連が見られ、いずれかに制約を感じる場合に、延長への要望がより高い傾向が見られた。

出典:「期末監査期間等に関する実態調査報告書」

期末監査に総監査時間の3割が集中

今回の調査で期末監査において、年間の総監査時間の約3割の時間を使って、手続を実施している実態が明らかになっています。

これに対して、各監査法人とも業務の平準化を目指して、業務改革に取り組んでいますが、平準化が進んでいないことが伺えます。

その原因の一つは、ここ5年程度の監査において、手続の深度が深まっていることが挙げられます。

今回の調査では、以下の領域に対する手続の深度が深まっていると感じている監査業務が9割に及んでいます。

  • 会計上の見積項目のリスク
  • 不正リスク
  • 特別な検討を必要とするリスク
  • 経営者の内部統制無効化のリスク

これらの領域の監査は、期末に実施する手続によって監査証拠を入手する部分が多い領域なので、これ以上の平準化は難しいのかもしれません。

三つ目に、期末日後に発生する監査時間は、年間を通じて発生する総監査時間の約3割に及んでいることが確認された。この背景には、近年(5年程度)、監査の深度が深まっている結果、期末監査の作業量が増加していることがある。各監査チームにおいて、期末監査作業の期中における前倒し実施や、IT を活用した単純作業の省力化といった効率化の努力を実施しているものの、期末日後に一定の監査時間が発生することは避けられない状況にあることが考えられる。

出典:「期末監査期間等に関する実態調査報告書」

現場の状況はクライアントと共有されていない

4つ目に、監査現場の逼迫した状況が、会社と共有されていないということが挙げられています。

「本調査ではその理由を明らかにできなかった」とされていますが、監査チームは、逼迫した状況に陥っている原因が、監査チームの能力の問題とされるのを恐れて、適切に共有していないのではないでしょうか。

四つ目に、監査現場が逼迫している場合においても、必ずしもその状況を被監査会社の監査役等へ十分伝えていない傾向が見られた。本調査ではその理由を明らかにできなかったが、監査現場が逼迫している場合においても、そのことを監査役等へ十分伝えていない傾向が観測されたことは注目に値する。

出典:「期末監査期間等に関する実態調査報告書」

会社のレベルが低いと監査時間は長くなる

監査時間は以下の場合に、長時間化する傾向があることが、統計的に確かめられたとされています。

  • 被監査会社の内部統制の不備の程度が大きい場合
  • 被監査会社の経理担当のリソースの水準が低い場合

比較的小規模な会社も上場している日本企業においては、必ずしも会社の内部統制は万全ではなく、また経理担当者の能力も必要水準に達していない場合も多々あります。

このような場合でも、必要な監査証拠を集めなければならず、必然的に監査時間が延びていくことが容易に想像できます。

五つ目に、監査時間の長さは、①回答者が被監査会社の内部統制の不備の程度が大きいと回答した場合及び②回答者が被監査会社の経理担当のリソースの水準が低いと回答した場合に、長い傾向にある点を明らかにした。被監査会社の内部統制の不備の程度や、経理担当のリソースの水準と監査時間に関連があることを、統計的に確かめた。

出典:「期末監査期間等に関する実態調査報告書」

 

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