監査が厳格化!?監査法人との意見対立を回避する方法

先日朝日新聞デジタルで以下のような記事が掲載されていました。

東芝問題が契機になり監査が厳格化し、企業との意見対立が増えているという記事なのですが、少し気になったので、取り上げてみたいと思います。

監査法人、企業とあつれき 東芝問題契機、チェック厳格化 報酬値上げでも対立

 

企業の財務内容をチェックする監査法人が、企業側と対立するケースが目立っている。

(途中省略)

昨年、ある上場企業と監査法人で会計処理を巡り意見の対立があった。問題になったのは、企業が新たに取得した施設の「減損」に関する考え方だ。

施設が一定の利益を生み、投資費用を回収できるのが理想的だが、回収が見込めない場合は「減損」を行い、損失計上する必要がある。ただ、営業を始めたばかりの時期は利益を上げにくい。企業は一定期間は様子を見て減損せずに済ませようとした。しかし監査法人は減損するよう主張した。

企業幹部は「監査法人はここまで厳しくなかったのに、急に対応が変わった」。対立の末、次の決算期から監査法人を交代した。この幹部は「前の監査法人は事業への理解が足りなかった」という。

(途中省略)

 

監査法人の現場担当者は「我々の業務をチェックする内部監査の担当者からは『企業の言い分に寄り添うな』との声が飛んでくる。事業への理解を深めて監査に現場の判断を入れる時代は終わった」という。

それでも専門家の間では「日本の監査はまだ欧米より甘い」との指摘がある。金融庁は監査法人を定期的に代えるローテーション制度の導入などを検討しており、監査法人と企業の「なれ合い」を排除する流れが続いている。

出典:朝日新聞DIGITAL 2018/4/6

減損会計の考え方

経営者が行った投資に対する回収が危ぶまれる場合は、損失計上を先送りすることなく、早期に損失計上を求めるのが減損会計の考え方です。

例えば、ある事業に供されている固定資産が100あったとして、当該事業から将来80のキャッシュフローしか見込めない場合は、当該固定資産に20の含み損があると考え、それが判明した期に20の損失を計上することが必要となります。

 

ここで問題になるのが、企業が行う将来キャッシュフローの見積です。

この点「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」36項では、「企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積る」こととされています。

 

事業への理解を深めることは「なれ合い」ではない

企業は減損会計を適用するにあたって、「企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて」将来キャッシュフローを見積もることが求められています。

そしてこれを受けて監査法人は、企業が行った将来キャッシュフローの見積が「企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて」行われているかどうかを判断することになります。

このとき、監査法人は企業が営んでいる事業を深く理解していなければ、企業が行った見積もりが、「合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて」行われているかどうか、判断できないのは明らかです。

ところが朝日新聞DIGITALの記事では、監査法人の現場担当者の意見として、「事業への理解を深めて監査に現場の判断を入れる時代は終わった」と紹介し、まるで事業への理解を深めて判断を行うことが、企業との「なれ合い」であるかのように書かれていますが、これは違うと思います。

事業への理解なくして、企業が行った将来キャッシュフローの見積の妥当性を監査することは不可能ですので、依然として監査を行う監査法人は、企業の事業への理解を深める必要があるのは、言うまでもありません。

監査法人が「事業を理解して判断」することと、「企業の意を汲み判断を甘くすること」は、全く次元の違う話です。

被監査会社の説明責任

東芝問題以降、監査が厳格化しているのは間違いないと思います。

各監査法人とも同じ過ちを繰り返すことは、致命傷になることを理解していますので、各監査法人とも生き残りをかけて監査の質の向上に取り組んでいます。

でもこのような監査法人の動きを企業幹部が「対応が変わった」として批判するのも筋違いのように思います。

そもそも摘要指針において、企業は「合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて」将来キャッシュフローを見積もることが求められているのを忘れてはなりません。

そして「合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて」将来キャッシュフローを見積もっていることの説明責任は、企業側にあるのです。

もし監査法人との意見対立に悩まれているならば、監査法人へ提出している会計処理の根拠資料が「合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて」作成されているか再確認することをおすすめします。

意見対立を回避するためには

監査法人へ提出する会計処理の根拠資料は「合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて」作成するようにしましょう。

例えばある事業における当期の売上が100であった場合に、来期の予測を120とするならば、増加する理由を客観的な資料等で説明できるように準備してください。

もし増加理由がマーケットの拡大にあるならば、第三者機関などが公表しているマーケット予測などの資料を使うのもよいでしょう。

あるいは自社のシェアの拡大を予測するならば、拡大する理由を客観的な資料で説明できるように準備してください。

 

また監査法人との意見調整は、時間の余裕をもって行うようにしましょう。

決算数値に大きな影響がある会計処理に関しては、期末前に監査法人との意見調整を済ませるようにしてください。

そうすることによって、仮に最初の時点で監査法人と意見対立することがあっても、時間を掛けて会計処理の根拠を説明することができますので、多くの意見対立は解消することが可能です。

 

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