日産のゴーン会長が有報の虚偽記載で逮捕 EY新日本監査法人の責任は?!

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が有価証券報告書の虚偽記載の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。

詳細は不明ですが、有価証券報告書に記載すべき役員報酬の金額を過少に記載したことが理由のようです。

 

【有価証券報告書の記載(コーポレートガバナンスの状況の役員の報酬等の記載】

虚偽記載でトップが逮捕されるのは極めて異例

報道によると有価証券報告書に記載すべき役員報酬の金額を過少に記載したことが逮捕の理由のようです。

でも有価証券報告書の虚偽表示で経営トップが逮捕されるのは極めて異例のことです。

いったい何があったのでしょうか。

 

過去に有価証券報告書の虚偽表示で経営トップが逮捕された事例は、2005年の西武鉄道の堤義明氏、カネボウの帆足隆氏、2006年のライブドアの堀江貴文氏、2012年のオリンパスの菊川剛氏などが思い出されます。

ただ、いずれの事件も今回のケースとは比較にならないくらい悪質性が高かったように思います。

 

また、記憶に新しい東芝の有価証券報告書の虚偽表示ですが、東芝は2008年から2014年までの間に2,000億円を超える利益を過大計上していました。

でも、これが発覚した時でも経営トップが逮捕されるようなことはありませんでした。

 

このことから考えても、数億円程度の役員報酬の過少計上で経営トップのカルロス・ゴーン会長が逮捕されることが、如何に異例のことかお分かりいただけると思います。

 

もしかすると、逮捕の表向きの理由は、役員報酬の過少計上となっていますが、もっと大きな事件が、裏側に隠されているのかもしれません。

日産自動車の監査はEY新日本有限責任監査法人が担当

有価証券報告書の虚偽記載が原因での経営トップの逮捕ということですが、日産自動車の有価証券報告書を監査していたのは、東芝の監査で問題となったEY新日本有限責任監査法人です。

 

対象となった平成30年3月期の有価証券報告書ですが、EY新日本有限責任監査法人は重要な虚偽表示は含まれていないとする適正意見を出しています。

このEY新日本有限責任監査法人の責任は、今後問われることになるのでしょうか。

「役員の報酬等」の記載は監査意見の対象外

有価証券報告書に添付されているEY新日本有限責任監査法人の適正意見ですが、監査報告書の意見対象は「経理の状況」に掲げられている連結財務諸表等及び財務諸表等です。

 

【EY新日本監査法人の監査報告書の記載】

 

一方で今回、問題となっている有価証券報告書の虚偽表示は、「経理の状況」よりも前に記載される「コーポレートガバナンスの状況」の「役員の報酬等」の記載です。

従って、EY新日本有限責任監査法人の監査対象外の記載での問題ということになり、これを原因として責任を問われることはなさそうです。

財務諸表等への影響はなかったのか?

「コーポレートガバナンスの状況」の「役員の報酬等」の記載については、監査意見の対象外であるため、この記載が虚偽表示であっても、EY新日本有限責任監査法人が責任を問われることはありません。

ただしゴーン会長の役員報酬に関わる会計処理の仕方如何では、財務諸表等への影響も考えられます。

 

また一部報道では、ゴーン会長は日産自動車の資金を私的に流用するなど、重大な不正行為があったともいわれています。

 

本来はゴーン会長が支払うべき費用を日産自動車が負担していたということになれば、この費用は日産自動車の損益計算書上では、役員報酬や寄付金などとして処理されなければならないはずで、これが事実なら損益計算書等にも虚偽表示があったことになります。

 

またゴーン会長は日産自動車の「関連当事者」に該当しますので、ゴーン会長が支払うべき費用を日産自動車が負担していたということになれば、金額によっては「関連当事者取引の注記」も必要になってきますので、注記についても虚偽表示があったことになります。

 

今後、捜査が進むにつれて詳細が明らかになってくると思いますが、もしこれらの事項が財務諸表等に重要な影響を及ぼしていれば、この財務諸表等に適正意見を出したEY新日本有限責任監査法人は責任を免れることはできません。

重要な虚偽表示になりえるか?

監査法人が実施する監査において求められているのは、投資家等をミスリードするような重要な虚偽記載を発見することであり、すべての虚偽表示を発見することが求められているものではありません。

 

この点、監査法人の監査では「重要性の基準値」を決めて、この金額以上の虚偽表示を見過ごすことがないように、監査手続を実施していきます。

この「重要性の基準値」ですが、一般的には税前利益の5%程度の金額として決定されることが多いです。

 

これを今回の日産のケースに当てはめてみると、日産自動車の連結財務諸表における税前利益は7,107億円ですので、「重要性の基準値」は355億円程度に設定して、監査を実施していることが考えられます。

一方で平成29年度のゴーン会長の役員報酬は10億円程度とされていますので、仮に全額計上されていなくても、その影響は税前利益の0.1%程度ということになり、重要な虚偽表示には該当しないことになります。

従って、EY新日本有限責任監査法人が仮にこれを見過ごしていても、責任を問われることはないでしょう。

 

ただ一部報道では、ゴーン会長は日産自動車の資金を私的に流用するなど、重大な不正行為があったともいわれています。

この私的流用が、どのような規模で行われていたかによっては、重要な虚偽記載となることも考えられます。

逮捕に至った本当の理由

上述のように役員報酬に関する虚偽表示のみで、経営トップであるゴーン会長が逮捕される事態に発展することは、通常では考えられません。

一部報道にあるように、ゴーン会長が日産自動車の資金を私的に流用するなど、重大な不正行為を行っていたことを重視し、東京地検特捜部が逮捕に踏み切ったと見るべきでしょう。

 

その不正行為の重大さによっては、監査を実施したEY新日本有限責任監査法人の責任が問われるような事態に発展することもありえるかもしれません。

 

今後の東京地検特捜部の捜査の行方に注目していきたいと思います。

 

ゴーン会長逮捕については、こちらの記事もどうぞ。

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