とまらない監査法人変更、監査法人を変更する本当の理由

2018年1月7日の日本経済新聞朝刊に以下のような記事が掲載されていました。

 

監査法人との蜜月に変化 交代実施企業、昨年1割増 東芝会計不祥事受け

上場企業の決算書が正しいかどうかをチェックする監査法人の交代が相次いでいる。2017年は124社と前年に比べ1割(13社)増えた。東芝の会計不祥事を見抜けなかった新日本監査法人を代える企業が多いのが特徴だ。監査法人側から自ら契約を断るケースも出始めた。会計監査に対する投資家の信頼が揺らぐ中、監査法人と企業の蜜月ともいえる関係に変化の兆しが出ている。

(以下省略)

(出典:2018/1/7 日本経済新聞)

 

記事では、東芝の会計不祥事を見抜けなかった新日本有限責任監査法人を交代させるケースの他、監査が厳格化する中、監査法人がリスクの高い企業の監査を辞退するケースも増えているとされています。

でも上場企業が監査法人を交代させる本当の理由はどこにあるのでしょうか。

継続する理由を株主に説明できない

東芝の監査は63年間もの長期にわたって新日本有限責任監査法人が担当してきました。

今回の新日本有限責任監査法人が東芝の会計不祥事を結果的に見逃すことになってしまった理由について、金融庁は「監査法人のローテーション制度に関する調査報告」において

  • 東芝のガバナンス体制を過信していた
  • 監査手続の前例踏襲や過去の監査従事者の判断への過信

の2点にあるとしており、監査契約の固定化が原因の一端となったと断じています。

 

日本の多くの上場企業の監査において、東芝同様に監査契約が固定化している実態があるのですが、東芝の会計不祥事を契機として、他の上場企業でも監査契約の固定化に株主や投資家の厳しい目が向けられるようになっています。

 

このような事態を受けて、監査法人選任に関する議案の決定権を持つ監査等委員会が監査契約の更新に慎重になったものと考えられます。

つまり監査契約が固定化している企業においては、東芝のような懸念があるため、このような懸念払しょくのために、監査法人変更に動いた企業が多かったものと思われます。

この傾向は、東芝の会計不祥事を見逃した新日本有限責任監査法人のクライアントで、顕著だったということは容易に想像できます。

 

過去には監査法人の交代はイレギュラーで、実際に交代があると、意見対立や会計不祥事など企業に対するマイナスのイメージとして捉えられることも少なくありませんでした。

ところが現在は長期間、監査契約を固定化させていることこそ、監査法人とのなれ合いの関係にあるのではないかと厳しく見られているということだと思います。

 

でも監査は企業のビジネスに対する深い理解の上、実施されるものなので、交代により監査の質が低下する懸念があることも忘れてはいけません。

監査報酬を引き下げる手段として利用

多くの経営者は監査の必要性を認めており、一定のコストを負担することに当然と理解していると思います。

しかしながら一部には、監査報酬は他の経費と同様に徹底的に削減すべきコストと捉えている経営者も残念ながら存在します。

このような経営者は、監査の質には無頓着で、監査報酬の安いところを探して監査契約を結ぼうとします。

従って監査法人を変更している企業の中には、監査報酬について監査法人と折り合いがつかず、監査法人を変更しているところも一定数存在すると思われます。

 

 

監査報酬は有価証券報告書で開示されています。

監査法人の交代前後で監査報酬の大幅な減額があった場合は、重要なサインとして捉えるべきでしょう。

秘かに行われるクライアントの選別

監査法人の変更は、企業が主体的に行うばかりではありません。

日本経済新聞の記事でも書かれているように、監査法人が契約の更新を断るケースも確かに存在しています。

 

監査法人は日本経済における重要なインフラとして機能しています。しかしながら一方では営利企業として利益を追求することも求められています。

そのため、社会インフラとして機能することの重要性は理解しつつも、リスクの高い企業の監査からは、手を引いている現実があります。

 

東芝の会計不祥事以降、各監査法人は生き残りをかけて監査の質の向上に取り組んでいます。

これはもし今度、東芝のように会計不祥事をも見逃すようなことがあったら、大手監査法人といえども、存続が危ぶまれるという危機感があるからです。

 

でも一方で会計士業界では人材の奪い合いが起きており、どの監査法人でも必要な会計士の数を確保するのに躍起になっています。

このような状況の中、手間のかかるリスクの高い企業の監査を断る監査法人の対応が理解できないわけではありません。

 

 

監査法人の変更理由については、適時開示で説明することが要請されています。

ただ多くのケースでは、形式的な理由が説明されているだけですので、背景にある本当の変更理由についても探る必要があると思います。

 

 

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