公認会計士は医師や弁護士と並ぶステータスの高い国家資格であり、多くの人が憧れる職業です。
でも公認会計士になるためには、難関といわれる公認会計士試験に合格しなければならず、トータルで2,000時間以上の学習時間が必要といわれています。
2,000時間といえば、一年間毎日5時間以上(2,000時間÷365日=5.47時間/日)勉強して、ようやくクリアできる時間であり、20代の貴重な時間を多く費やすことになりますので、本当にそれだけの価値がある資格なのか、心配になりますよね。
一部には以下の理由で「公認会計士はやめとけ」と言っている人もいます。
- そもそも難関試験だから受からない
- 試験に受かっても就職できない
- 監査法人の労働環境が悪すぎる
- 公認会計士の仕事なんてつまらない
- 将来的にAIに仕事を奪われ、食いっぱぐれてしまう
でもこれらの理由は、本当に事実なのでしょうか。
この記事では、公認会計士はやめとけと言われる理由が、本当に事実なのか、一つ一つ検証しています。
この記事を読めば、公認会計士の資格が、目指すべき価値のある資格なのかどうかが分かります。
そもそも難関試験だから受からない
公認会計士試験は難関試験であり、いくら勉強しても合格できない試験だから公認会計士なんてやめとけと言われることがあります。
でも本当に公認会計士試験は難関試験で、いくら勉強しても合格できないような試験なのでしょうか。
確かに平成17年以前の旧試験制度では、本試験の作問は担当の試験委員に一任されていたため、その試験委員の独自見解を深く理解していないと正答できないよう難問が当然のように出題されていました。
難関試験だから受からない、という人の頭には、この昔のイメージがあるのでしょう。
ところが平成18年に、試験制度が大幅に見直されており、現行試験制度では、試験委員の著書を読み込んでいなければ答えられないような難問は、もはや出題されず、公会計士になろうとするものが、実践的な思考力や判断力を有しているかを判定するための試験へと変化しています。
その結果、特別な才能を持っていない「普通」の人でも、公認会計士試験に合格できるようになっています。
試験である以上、努力なくして合格することはあり得ません。
でも現行の試験は、正しい努力さえ行えば、誰でも公認会計士になることができる試験なのです。
またここ何年かの試験結果を見てみると、平成23年には6.5%まで落ち込んだ合格率が11%台まで上昇していることが見て取れ、今が公認会計士になるチャンスであることが分かります。
試験に受かっても就職できない
試験に合格すると、多くの合格者は手っ取り早く実務経験を積むことができる監査法人に就職します。
でもかつては、試験合格者が就職できず就職浪人が発生したことが社会問題化したこともあります。
試験に受かっても就職できない、という人には、この頃のイメージが残っているのでしょう。
監査法人は営利企業であり、景気動向に応じて、新規採用数を増減させます。
とはいえ、これは昔から行われてきたことであり、かつては就職浪人が多数発生するようなことはありませんでした。
監査法人は、後進に実務経験の場を提供するという社会的な使命を自覚しており、世界を揺るがしたリーマンショックの混乱時でも、一定数の新規採用は続けていましたので、通常であれば社会問題化するほど、就職浪人が発生することはなかったはずです。
にもかかわらず多数の就職浪人が発生したのは、内部統制監査や四半期レビューの導入で、監査業務が大きく拡大する中、金融庁が合格者を増加させる判断にブレーキをかけることができず、業界の労働市場の需給バランスが大きく崩してしまったことが原因でした。
このように世界を揺るがしたリーマンショックという大きな景気変動と内部統制監査を始めとする監査制度の大変革が重なったことによる、特殊な状況で発生した事態ですので、今後同様のことはそう簡単には起きないと考えられます。
また東芝問題を契機として、各監査法人は監査の品質向上に生き残りをかけて取り組んでおり、現在は完全な人手不足に陥っています。
また働き方改革の波は、監査法人とて例外なく押し寄せており、残業削減が人手不足に拍車をかけている状況です。

このような状況はまだ数年は続く見込みであり、「試験に受かっても就職できない」ような状況は、まったく想定されません。
監査法人の労働環境が悪すぎる
監査は、株主総会を起点とする各種スケジュールや有価証券報告書、四半期報告書の提出期限に合わせて実施されます。
従って、手続きを実施する期限が厳格に定まっています。
そのため、何らかの理由で作業が遅れた場合でも、残業を行うことによってリカバリしなければなりません。
これが「我々はプロフェッショナルである」という耳障りの良い言葉とともに、監査法人での共通認識となり、違法残業が正当化されていました。
労働環境が悪すぎるという人には、このイメージがあるのかもしれません。
でも電通で女性新入社員が、異常な労働環境におかれ、入社後間もなく過労死した問題を受けて、多くの業界で働き方を根本的に見直す動きとなっています。
監査法人も例外ではなく現在では、スケジュールを厳守しなければならないことと、法定労働時間を守ることは、同じく必ず守らなければならないレギュレーションとして認識されるようになっています。
また一定時間以降は社内のネットワークから遮断されることによって、物理的に違法残業ができない仕組みを採用している監査法人もあり、違法残業の横行は、過去のものとなっています。
公認会計士の仕事なんてつまらない
監査を適切に実施するためには、会計に関する知識と監査に関する知識だけでは足りず、企業の内部環境に関する理解やビジネスに関する理解も必要です。
これらの理解がない中で監査手続きを実施しても、なぜそのような手続きが必要なのか理解できず、上司から言われるままに、手続きを実施することになり、面白さを感じることはないでしょう。
公認会計士の仕事がつまらないという人は、まだ仕事への理解が乏しい経験の浅い人の
意見ではないでしょうか。
公認会計士の仕事は、監査だけでなく、コンサルティングや税務など多岐に及びます。
監査法人でも監査以外の業務に携わる機会は多くあり、望めばいくらでも監査以外の仕事に関与させてもらえます。
もし監査の仕事が性に合っていなくても、他の仕事はいくらでもありますので、その中で面白いと思えることをやればいいのです。
将来的にAIに仕事を奪われ、食いっぱぐれてしまう
コンピュータ・テクノロジーの発展には目を見張るものがあり、今後多くの仕事がAIに代替されることは、避けて通れない事実であり、公認会計士に仕事も、例外ではありません。
でもそのことを理由に公認会計士はやめとけと結論付けることは、拙速すぎます。
大事なのは、いつ頃AIに代替されるのかということであり、その時期を見誤ると、結論を誤ってしまいます。
会計処理が画一的になされるような領域については、近い将来、AIが積極的に活用されることになると思われます。
しかしながら企業経営が人間によって、なされるものである限り、経営者の経営判断や投資判断に対する評価や、経営者の誠実性に対する評価などは、どれだけAIが進化したとしても、最終的には人間である公認会計士の監査人としての総合的な判断が必要です。
これらの領域に関して、AIが活用されるには、少なくとも50年以上の時間が必要であると考えられ、またその頃には公認会計士に限らず、ほとんどの仕事がAIに代替されてしまっているのではないでしょうか。
AIに仕事を奪われると騒いでいる人に限って、公認会計士の仕事を正確には理解できていないように思います。
まとめ
公認会計士はやめとけと言われる理由を一つ一つ見ていくと、どれも正確性を欠いていることが分かります。
これらの理由は、公認会計士になることをあきらめた人たちが、自らを納得させるために、考えだした理由のように思えてなりません。
公認会計士になることは、厳しい競争を勝ち抜く必要があり、簡単なことではありません。
でも正しい努力を行えば、道は必ず開けますし、試験に合格すれば、費やした努力を大きく上回る見返りを得ることが可能です。
公認会計士になりたいなら、合格者が増加することが想定される今がチャンスです。
何がチャンスなのかは、何が正しい努力なのかは、以下の記事で詳しく書いていますので、こちらの記事も読んでみてください。

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