弁護士に並ぶ難関試験と言われている公認会計士試験ですが、公認会計士になるためにはどれくらいの勉強時間が必要なのでしょうか。
一般的には3,000時間から6,000時間の勉強時間が必要と言われているのですが、これは本当なのでしょうか。
公認会計士になりたいけど、どれくらい勉強しなければならないのか不安で勉強を始められないという方もいらっしゃると思います。
公認会計士になるための勉強時間のリアルについて、実際に公認会計士試験に合格した筆者が徹底解説したいと思います。
公認会計士試験に合格するまでの勉強時間
公認会計士になるためには、一般的には3,000時間から6,000時間もの時間が必要と言われているのですが、なぜ時間に幅があるのでしょうか。
これは何回目の受験で公認会計士試験に合格できるかによって時間が変わってくるからに他なりません。
実際に同期たちに合格までの受験回数を聞いてみると、一回目の受験で合格した人は5%程度、二回目に合格した人は35%程度、三回目で合格した人は30%、四回目以降で合格した人が15%程度といった感じです。
何回目受験で合格したかによって、どれだけ勉強したかは大きく変わってくるのです。
一発合格の場合
公認会計士試験に一発合格した人の多くは、第Ⅰ回短答式試験のおよそ1年前から勉強を始め、論文式試験が終了するまでの1年8か月(20か月)程度の期間、勉強しています。
一日に6時間程度の時間を掛けて勉強を続け、週一日は休養したとすると3,000時間(6時間×25日×20か月=3,000時間)になります。
このことを考えると公認会計士になるためには、最低でも3,000時間は必要ということが言えそうです。
2回目の受験で合格した場合
では2回目の受験で合格した場合の勉強時間はどれくらいになるのでしょうか。
2回受験ということは32か月間(1年8か月(初年度)+12か月(2年目)=32か月)勉強を続けてきたことになりますので、勉強時間のトータルは4,800時間(6時間×25日×32か月=4,800時間)になります。
実際の試験では一発合格する人の数は多くありませんので、合格者は平均的にはこれくらいの時間をかけて勉強していると言えるでしょう。
3回目の受験で合格した場合
一方で合格するまでに3回受験した場合はどうでしょうか。
3回受験ということは44か月間(1年8か月(初年度)+12か月(2年目)+12か月(3年目)=44か月)勉強を続けてきたことになりますので、勉強時間のトータルは6,600時間(6時間×25日×44か月=6,600時間)になります。
合格までの受験回数が多くなれば、それだけ勉強時間は増えてしまいます。
一発合格を目指すなら3,000時間、2回目での合格を目指すなら4,800時間が一つの目安になるのだと思います。
科目別の勉強時間
では公認会計士試験の科目別にみた勉強時間はどれくらいになるのでしょうか。
以下では短答式試験と論文式試験を分けてみていきたいと思います。
短答式試験
公認会計士の短答式試験は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目で実施されます。
各科目の合格ラインに到達するまでの勉強時間の目安は以下のとおりです。
科目 | 時間 |
財務会計論 | 700時間 |
管理会計論 | 400時間 |
監査論 | 300時間 |
企業法 | 400時間 |
合計 | 1,800時間 |
財務会計論が一番時間を要する科目で短答合格レベルになるまでに、およそ700時間程度の勉強時間が必要です。
また同じく計算と理論から構成される管理会計論は400時間、監査論は300時間、企業法は400時間程度の勉強時間が必要です。
これらを合計すると短答式試験に合格するレベルに達するまでにトータルで1,800時間以上の勉強時間が必要となります。
論文式試験
公認会計士試験の本丸である論文式試験は会計学(財務会計論、管理会計論)、監査論、企業法、租税法、選択科目の6科目で実施されます。
それぞれの科目で合格レベルに達するまでに必要とされる勉強時間は以下のとおりです。
科目 | 時間 |
財務会計論 | 200時間 |
管理会計論 | 100時間 |
監査論 | 100時間 |
企業法 | 200時間 |
租税法 | 400時間 |
選択科目(経営学) | 200時間 |
合計 | 1,200時間 |
租税法と選択科目以外は、短答対策で基礎知識の習得は済んでおり、論文対策に特化して勉強を進めることになります。
一方で租税法は短答合格後にはじめて勉強する科目となり、それなりに勉強時間が必要となります。
選択科目については、特にこだわりがなければボリュームが最も少ない経営学を選択するべきで、経営学を選択すれば200時間程度の学習時間で十分合格レベルに到達することができます。
受験生の勉強時間のリアル
では実際の公認会計士試験の受験生たちは、どのような生活を送っているのでしょうか。
以下では受験生たちのリアルを見ていきたいと思います。
大学生
大学生は大学の授業にも出席しなければならず、一日中公認会計士試験の勉強をするというわけにはいきません。
午前中は大学で授業を受け、午後には専門学校へ移動して前日の講義の復習をし、夕方以降は新たに講義を受けることになります。
大学の授業が忙しいと公認会計士試験の勉強時間が十分確保できませんので、大学生の場合はある程度単位が揃う3年生以降に勉強を始めたほうが負担が少なくて良いと思います。
無職
公認会計士試験の勉強に集中できる無職の人は、朝から専門学校へ移動し、午前中は自習を行います。
そして昼休憩を挟んで午後も自習時間に充て、夕方以降は新たに講義を受ける毎日となります。
無職の人は大学生や社会人よりも勉強時間の確保しやすく、一日中勉強時間に充てることも可能なため、試験勉強を有利に進めることができます。
社会人
社会人は日中は仕事をしなければならず、勉強時間を確保することができません。
したがって仕事が終わった後に専門学校に移動して勉強することになります。
また自習時間を確保するために、自宅に帰ってからも勉強を続ける毎日になります。
無職の人や大学生と比べると社会人は勉強時間を確保するのが難しいことことから、より一層効率的に勉強することが必要となります。
他の資格の勉強時間との比較
公認会計士試験では合格するまでに3,000時間以上の勉強時間が必要と言われていますが、他の資格試験ではどうなんでしょうか。
他の資格試験で合格レベルに到達するまでに必要になる勉強時間は以下のとおりです。
資格 | 必要学習時間 |
日商簿記3級 | 100時間 |
日商簿記1級 | 500時間 |
司法書士 | 3,000時間以上 |
税理士 | 4,000時間以上 |
司法試験(予備試験) | 3,000~10,000時間 |
比較的簡単に合格することができる日商簿記3級なら100時間程度、日商簿記1級でも500時間程度の勉強時間時間で合格レベルに到達することが可能です。
一方で司法書士では会計士と同等の3,000時間、また税理士試験では会計士以上の4,000時間、司法試験の予備試験では最長10,000時間もの勉強をしなければ、合格レベルに到達できないと言われています。
これらを見る限り公認会計士試験は合格後に得られるステータスとの関係で、タイパの良い試験ということができるのだと思います。
長時間勉強する価値はあるのか
公認会計士になるためには長時間の勉強時間が必要になるのですが、それだけの時間をかけて公認会計士になる価値はあるのでしょうか。
筆者は以下の理由から時間をかける価値は十分にあると思っています。
高収入
試験合格直後の年収でも550万円はあります。
また監査法人で7、8年働いた頃には年収は1,000万円を超えるのが通常です。
年収が1,000万円を超える人は全給与所得者の4.6%しかいないのですが、7、8年でそこへ辿り着けるのですから、長時間の勉強時間をかける価値は十分にあると思います。
キャリア選択に幅
試験合格後、最初は独占業務である監査の経験を積むために監査法人に入所するのが一般的なのですが、その後のキャリアはさまざまです。
監査を極めたいと考える人は、そのまま監査法人で働き続けてパートナーになることを目指します。
一方でコンサルティング業務や税務に興味を持った人は、コンサルティング会社や税理士法人等へ転職して経験を積み、先々は独立開業を目指すことも可能です。
また一般事業会社へ転職し、誰もが知っている上場企業のCFOになっている公認会計士も数多くいます。
手に職のある公認会計士だからこそキャリア選択の幅が広く、この点でも長時間の勉強時間を掛ける価値が十分にあるのだと思います。
やりがい
公認会計士の独占業務である監査の仕事は「市場の番人」と言われるほど公共性の高い仕事であり、社会貢献が実感できるやりがいのある仕事だと思います。
また公認会計士の仕事はさまざまな場面でクライアントから感謝される仕事であり、感謝されるたびにやりがいを感じることができる仕事でもあります。
食っていくために仕方なしに働く人が多い中、やりがいのある仕事ができる公認会計士は長時間の勉強時間をかける価値が十分にあるのだと思います。
モテる
練習を重ねて結果を出すプロスポーツ選手や、アイデアを磨きぬいてビジネスとした起業家などは努力して結果を出した人たちであり、多くの人を惹きつけます。
公認会計士も夢を実現させるために努力して難関試験を突破した人たちであり、異性が魅力を感じるのも当然と思います。
公認会計士はプロスポーツ選手や成功した起業家ほどモテることはありませんが、普通のサラリーマンよりは、ずっとモテる職業だと思います。
この点でも公認会計士は長時間の勉強時間をかける価値はあるのだと思います。
できるだけ時間を掛けずに合格する方法
長時間の勉強時間を費やしてでも、なる価値は十分にある公認会計士ですが、できれば最短ルートでなりたいと思う人がほとんどだと思います。
では最短ルートで公認会計士になるためには、どのような勉強法が必要なのでしょうか。
そもそも公認会計士試験は一定以上の点数を取った者全員が合格できる試験ではなく、公認会計士・監査審査会が決めた合格者数の枠に入った者だけが合格できる競争試験です。
そのような競争試験では、合否ライン上にいる受験者の半分が正答できる問題を取りこぼさないようになることを目指して勉強を行うことによって、最短ルートで合格することが可能となります。
ではどうすれば合否ライン上にいる受験者の半分が正答できる問題を取りこぼさないようになれるのでしょうか。
限られた時間を有効に使うためにも学習する論点を絞り込むことが必要なのですが、絞り込みを受験のプロ集団である専門学校に行わせるのです。
ほとんどの受験生がいずれかの専門学校を利用していますので、専門学校が絞り込んだ論点をしっかり理解してアウトプットできるようになっていれば、結果的に合否ライン上にいる受験生の半分が正答できるような問題を取りこぼすようなことはなくなっているのです。
勉強を長く続けるコツ
公認会計士になるためには3,000時間以上の勉強時間が必要になるのですが、少しでも長く勉強を続けるためにはどうすれば良いのでしょうか。
長い勉強時間を続けるコツは以下にあります。
強い気持ちを持つ
長い勉強時間を続けるためには「公認会計士になりたい」という強い気持ちを持ち続けることが必要です。
公認会計士の勉強は1年以上の長期にわたって継続することになります。
そのため初期のころは大丈夫でも、勉強を続けているうちにどうしてもつらくなる時があるものです。
そんな時でも「公認会計士になりたい」という強い気持ちを持てていれば、踏ん張りをきかせられるものです。
毎日夜8時に学習を終わらせるAさんと9時まで頑張るBさんでは、たいした差はないように見えますが、一年で300時間以上の勉強時間の差ができてしまいます。
これは選択科目である経営学の学習時間が200時間程度と言われていますので、いかに大きな差になるか、お分りいただけると思います。
うまく気分転換する
一年以上の長期にわたり勉強していると、途中「このまま学習を進めていても、一生試験に合格できないのではないかと」多くの人が強い不安に襲われます。
そしてその不安に負けて、公認会計士になることを諦める人たちも少なからずいます。
そんな強い不安に襲われている時は、うまく気分転換するようにしましょう。
調子の悪い時に無理をし続けて、ぷっつり糸が途切れてしまうと取り返しがつきません。
そんな時は試験のことはいったん忘れて友人や恋人とゆっくりおしゃべりしたり、自分が好きなことに没頭したりして、うまく気分転換を図るようにしましょう。
勉強期間は1年以上の長丁場ですので、ダメな時はうまく気分転換してきた人たちが合格を勝ち取っていくのです。
受験仲間とは適切な距離をおく
専門学校に通っていると気の合う受験仲間たちと仲良くなっていくのが普通です。
受験仲間を作ることにはメリットもあるのですが、デメリットもあるので注意が必要です。
勉強に疲れて休憩室にいくと仲の良い受験仲間たちがいて、ついついおしゃべりの輪に加わってしまい気が付いたら2時間も休憩していた、なんてことも起きてしまいます。
勉強法などの情報交換も必要なので、受験仲間は作るべきだと思いますが、付き合いには適切な距離を置くようにしてください。
まとめ
公認会計士になるためには少なくとも3,000時間以上もの勉強時間が必要となり、確かに簡単なことではありません。
でも普通にサラリーマンになった場合、83,200時間(一日8時間×5日×52週×40年間=83,200時間)もの時間をやりたくもない仕事に費やすことになるのです。
それに比べれば学生時代の3,000時間で公認会計士になれるなら、やらない手はないと思いませんか?
公認会計士にさえなれれば、掛けた勉強時間を十分に上回るメリットを享受できるのです。
ぜひ公認会計士を目指してみてください。
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