公認会計士試験の論文式試験は、必須科目4科目(会計学(財務会計論、管理会計論)、監査論、企業法、租税法)と選択科目(経営学、経済学、民法、統計学)から選択した1科目の合計5科目で実施される試験です。
選択科目については、願書提出時に受験科目を選択する必要があり、その後の変更は認められていません。
そんな選択科目ですが、一般的には「経営学」を選択することが推奨されることが多いです。
ではなぜ公認会計士の論文式試験において、選択科目は「経営学」がおすすめなのでしょうか。
その理由を明らかにしていきたいと思います。
選択科目間の得点差は調整される
公認会計士の論文式試験においては、選択科目間の有利不利が生じないように、偏差値によって合否を判定しています。
例えば「経済学」の平均点が70点、「経営学」の平均点が50点である場合に、各科目の素点をそのまま合算して、合否判定を行えば、選択科目間で不公平が生じてしまいます。
このような事態を避けるために、公認会計士・監査審査会では、偏差値により合否判定を行っています。
各受験者の得点は、当該受験者の素点(点数)がその採点を行った試験委員の採点結果の平均点から、どの程度離れた位置にあるかを示す数値(偏差値)により算定しています。
出典:「平成 29 年公認会計士試験(論文式試験)の合格点及び合格率等について」(公認会計士・監査審査会)より
これにより科目間の得点差は調整されることになっていますが、完全に科目間の有利不利がなくなっているわけではありません。
偏差値で合否判定を行うことによって、図らずも科目によって、他の受験生と差をつけやすい科目と付けにくい科目が生じてしまっています。
経済学・統計学は差を付けにくい科目
そんな中、「経済学」や「統計学」を選択する人は、これらの科目に相当の自信を持っている人たちだと想定されます。
過去に大学などで集中的にこれらの科目を学んだことがあり、相当のアドバンテージがあると考えた人たちが、「経済学」や「統計学」を選択していると考えられます。
そうするとこれらの自信を持った人たちの集まりの中で競争することになりますので、いくらアドバンテージがあっても、これらの科目では他の受験者に対して、差をつけにくいと考えられます。
一方で「経営学」は多くの受験生が選択しますので、受験者のレベルも分散されることが想定され、きちんとした対策を行うことによって、差を付けやすい科目と言えます。
経営学を選択する受験生が85%以上
公認会計士試験の実施主体である「公認会計士・監査審査会」は受験者の選択科目の選択割合は公表していませんので、正確な選択割合は不明です。
ただし「日本公認会計士協会」において補習生を対象に行われているアンケートにおいて、公認会計士試験の選択科目に関するアンケートが行われており、その結果の一部が平成27年6月に公表された「会計専門職人材調査に関する報告書」で引用されており、うかがい知ることができます。
その補習生を対象に実施されたアンケートでは、平成24年は89%、平成25年は88%、平成26年は85%もの合格者が選択科目に「経営学」を選択したと回答しているのです。
受験者が多い科目に専門学校も力を入れている
専門学校もビジネスで公認会計士講座を開講しているので、受験者が多い科目によりコストを掛けて、講座を運営しています。
従って受験者の多い「経営学」の講座が一番充実した講座となっていることが考えられます。
民法は120年ぶりの大改正が控えている
民法については、2017年5月26日に参議院本会議で民法改正法が承認され、成立しています。
今回の改正は120年ぶりの大改正となり、学習を進めていくうえで、混乱が予想されますので、当面の間、民法を選択するのは避けるべきと思います。
またTACや大原などの専門学校でも、当面の間、初学者を対象とした民法の講座は開講しないとされていますので、事実上、民法の選択肢はありません。
もし他の科目に圧倒的なアドバンテージがあるなら、これらの科目を選択するのも良いと思います。
ただ通常はそのような圧倒的なアドバンテージは考えられませんので、やはり選択科目は「経営学」を選択すべきだと言えます。
これから公認会計士試験の学習を始める方は、選択科目決定の参考にしてください。
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