公認会計士の仕事は、忙しい時期(繁忙期)と暇な時期(閑散期)がある仕事です。
2009年3月期より始まった四半期決算制度により、年間の監査スケジュールはそれ以前に比べて平準化していますが、まだまだ時期によって業務量に波のある職業です。
では実際に監査法人で監査を行っている公認会計士の一年間の業務量がどのように変わっていくのか見てみたいと思います。
7月(忙しさ:★★★☆☆)
3月決算の上場会社は6月末が第1四半期決算期末になります。
そのため監査法人で勤務する多くの公認会計士が、7月は第1四半期のレビュー業務で比較的忙しく過ごします。
ただ新しい年度が始まったばかりで、余程急激な変化がない限り第1四半期決算から会計上の問題等が噴出することは少なく、多くの判断が前年度末決算の判断を踏襲することになるので、睡眠時間を削って仕事をするというほど忙しいということはありません。
8月(忙しさ:★☆☆☆☆)
8月が一年間で最も暇な時期になります。
多くの監査法人がお盆休みとして丸々一週間の夏季休暇を取るのもこの時期です。
都合がつく人は、法人所定の夏季休暇に有給休暇をくっつけて、二週間以上の長期休暇を作って海外旅行を楽しんだりする人もいます。
最近は有給休暇の取得を奨励されていることもあり、この時期に有給休暇を取得する人が増えていますので、月の半分くらいが休暇という人も少なくありません。
9月(忙しさ:★★☆☆☆)
9月になると監査計画の立案作業が本格化します。
会社や業界を取り巻く経済環境の分析を行ったり、会社の事業に関するリスクを見直したりするのがこの時期です。
また内部統制の整備状況の検証作業などはこの時期に実施することになります。
ただ多くの作業は所定の勤務時間内に行いますので、この時期は残業しない人がほとんどではないでしょうか。
10月(忙しさ:★★★☆☆)
9月末は3月決算会社の第2四半期期末になります。
そのため監査法人で勤務する多くの公認会計士が、10月は第2四半期のレビュー業務で比較的忙しく過ごします。
第1四半期では、前年度末の判断を踏襲することが多かったのですが、第2四半期あたりからあらたな判断が必要になってきます。
繰延税金資産の回収可能性に変化はないか、減損が必要な固定資産はないか、など多くの時間を割いて監査手続きを実施していきます。
従って、第1四半期に比べると残業は多くなる傾向があると思います。
11月(忙しさ:★★☆☆☆)
引き続き年度監査の監査計画の更新作業や内部統制の運用状況の検証作業などをこの時期に実施していきます。
業績の良くない会社の場合は、会計上の問題等が噴出する場合もありますので、第3四半期決算や年度末決算に向けて、会社との打ち合わせが多くなってくるのもこの時期です。
業績が良い会社の場合は、粛々と監査計画の更新作業や内部統制の検証手続きを進めていくことになります。
ただこの時期も、所定の勤務時間内に多くの作業は終了させて、ほとんど残業しないという人が多いのではないでしょうか。
12月(忙しさ:★☆☆☆☆)
12月も公認会計士にとっては、8月に続く比較的暇な時期です。
この時期に多くの公認会計士が有給休暇を取得するのではないでしょうか。
年末年始ですが、パートナーは挨拶回りで忙しいのですが、職員はこの時期に行うべき業務はほとんどありません。
そのため、特別な業務を抱えている人を除いて、所定の年末年始休暇に有給休暇をくっつけて、長期休暇にして海外旅行を楽しむ人も多いのがこの時期です。
1月(忙しさ:★★★☆☆)
12月末は3月決算会社の第3四半期期末になります。
そのため監査法人で勤務する多くの公認会計士が、1月は第3四半期のレビュー業務で比較的忙しく過ごします。
この頃から年度決算を睨んでのクライアントとのミーティングが多くなります。
業績が悪い会社だと、繰延税金資産の回収可能性や固定資産減損など各種の見積について、それなりの時間を割いてレビューすることになります。
また会社によっては、売上債権等の残高確認状の発送手続などを行っていただく場合もありますので、そのような場合は、発送先の抽出などを残業して行うことになります。
2月(忙しさ:★★☆☆☆)
第3四半期のレビューが終われば、年度監査に向けての準備を行うことになります。
監査計画の更新や内部統制の検証作業のやり残しへの対応、確認状関連の手続きの実施など段々年度監査に向けて忙しくなってくるのが2月です。
ただ毎日残業するほどの忙しさではなく、ほとんどの業務は所定の勤務時間内に終わらせることができるボリュームですので、週に1、2日の残業で帰っている人が多いのではないでしょうか。
3月(忙しさ:★★★☆☆)
年度監査に入ると非常に忙しくなるため、その前に内部統制の検証手続や確認状の差異調整の検証手続などは3月中に終わらせておくことが求められます。
従って担当している会社の手続きが遅れているようなら、遅れを取り戻すために残業することもありえます。
ただ4、5月が忙しいことが分かっていますので、3月から飛ばし始めると体がもたないこともあり、急いで手続を行いつつも、極力残業しないようにしている人が多いように思います。
4月(忙しさ:★★★★★)
間違いなく年間を通して一番忙しいのが4月になります。
監査法人では、4月の中旬から5月上旬までの土曜日が出勤日となります。また4月下旬から始まる大型連休についても、祝日の何日かは出勤日に変わります。
日々の残業についても手続の進捗状況によりますが、多くの人が手続を終わらせるべく、連日残業しています。
もっとも働き方改革が叫ばれている中、休日出勤や残業時間の上限を守ることが厳しく求められており、睡眠時間が3、4時間しか取れないような日々が続くようなことは、なくなりました。
それでも休日出勤、残業については、36協定の上限近くまで行う人が多いです。
5月(忙しさ:★★★★☆)
5月も4月に引き続いて忙しいのが続くのですが、会社法監査の監査報告書が発行される5月中旬頃には、忙しさのピークも過ぎてきます。
ただこの頃から人によっては年度監査以外の業務で忙しい場合があります。
4月中旬から5月上旬までの最繁忙期は、年度監査以外の業務はほとんど行いません。
しかし最繁忙期を過ぎるとその時期に何もできなかった分、それ以外の業務で忙しくしている人も中にはいます。
6月(忙しさ:★★☆☆☆)
6月は開示書類のチェックと新年度の監査計画の立案が主な業務となります。
4、5月の忙しさが過ぎ、少しゆっくりしたくなるのがこの時期です。
でも有価証券報告書のチェックが終われば、新年度の準備を行わなくてはなりません。
とはいえ、4、5月にさんざん残業してきているので、この時期はできるだけ残業しないように所定の勤務時間内に業務を終わらせることを考えて、仕事をしている人が多いと思います。
まとめ
監査法人で勤務している公認会計士の忙しい時期と暇な時期は、はっきりしています。
そのため忙しい時期はしっかり働き、暇な時期は思いっきりリフレッシュするというメリハリを意識している人が多いように思います。
過去には際限なく残業することを求められていた時期もありますが、働き方改革が叫ばれている中、そのような残業を求められることはなくなりました。
従って、仕事もバリバリやりながら、プライベートも充実させたいと考えている人には、公認会計士の仕事は、ピッタリだと思います。
公認会計士になれば、充実した人生を送れると思いますので、ぜひ公認会計士の資格を目指してください。
公認会計士になるなら、ここ数年がチャンスです。公認会計士になりたい人は、こちらの記事も読んでみてください。
コメント
こんにちは。いつも楽しく見ています。
私は今、会計士受験生ですが、会計士の勉強をしていたら司法試験も受けたくなってきました。希望としては会計士の試験に受かったら監査法人で働いて、働きながら司法試験の勉強もしたいと思っています。
問題は司法試験の日程が毎年5月の半ば過ぎ、具体的には今年でいうと、15,16,18,19で曜日は水、木、土、日となっています。この曜日の組み合わせは毎年変わらないようです。
繁忙期が5月ということで、5月の半ばである水曜と木曜に有給は取れないとしても、風邪などと申告して休むことは可能でしょうか。
この記事でだいぶ、いつまで繁忙期なのかは具体的には示されていますが、このちょうど5月の真ん中辺りというのは峠を越えているでしょうか。
正直、締め切りなどもあるでしょうし、あまりにも繁忙期中の繁忙期であれば、風邪とか言ったって休めないよなと思ってしまいます。
コメントありがとうございます!
5月中旬は、会社法監査のピークが落ち着いたばかりで、早い会社の有価証券報告書のドラフトのチェックなどを行っている頃です。
確かにピークは過ぎていますが、それなりに忙しい時期でもありますので、まだまだ遊びなどの理由では、有給休暇の申請は出しにくい時期です。
でも司法試験の受験のために有給休暇を取得するなら、話は別です。
普通の上司は、一緒に働いている仲間が、がんばっているのを知っていたら、喜んで有給休暇の取得を認めてくれるものです。
なのでその時が来れば、正直にお話ししてみれば良いと思いますよ。
でもダブルライセンスも考えられているということですが、いずれかの資格だけでも十分では?とも思います。
会計士の仕事をしていると、法務の関係で、弁護士に意見を求めたりすることもあります。
法務の関係を整理しないと、正しい判断ができないので、法務の整理に弁護士の力を借りるのです。
あるいは企業の海外進出に際して、法務面での規制等の課題を、現地の弁護士の力を借りて、レポートするなんていうこともあります。
このように会計士の仕事は、法務にも密接に関連するのですが、必要な時はその道の専門家の力を借りれば、足りるのであって、自らが弁護士の資格を有していることが求められることは、ほとんどありません。
反対に弁護士の資格で仕事をしている時も、必要な時は会計士の力を借りれば良いのであって、自らが会計士であることが求められることは、そう多くはないのだと思います。
大事なのは、会計士でも弁護士でも、その資格を十分に生かせるように、合格後も継続して知識と経験を積み続けることだと思います。試験に合格することによって、ようやく専門家としてのスタートラインに立つことができるにすぎません。
合格後、初めてクライアントを訪問した時、あれだけ勉強したのに、自分が実務について何も知らないことに驚くと思います。
そして試験合格後に会計士としてのキャリアを積むために、やるべきことは、たくさんあります。
なのでダブルライセンスを目指すかどうかは、今決める必要は全くなくて、いずれかの資格取得の後に、ゆっくり考えれば良いのだと思います。
まずは、会計士試験の受験、がんばってくださいね!
合格を心よりお祈りしています!
ご丁寧にありがとうございました。
司法試験を考えたきっかけは、周りの友人が司法試験に受かりだしたので、とても刺激になり、会計士の勉強が上手くいっていることで、私もトライしたいと思ったのです。それと、そう思えるような気持であること自体、稀なことだと思ったので、裾野を広げるのも大事かなと。
繁忙期について大変詳しく教えてくださり、ありがとうございます。どうしても休めないような時期ではないということですね。
そもそも監査法人の仕事についていけなければ、たぶん弁護士としてもダメでしょうし、最初のうちは会計士として一人前になるために勉強しようと決めました。背中を押してくださり、ありがとうございます。
今年の8月まで全力で駆け抜けて、色々考えてみたいと思います。
この度は本当にありがとうございました。